4~6月は残業すると税金が高くなる? 税金と社会保険料を正しく理解

税金の知識

もう4月も中盤ですね。サラリーマンの人は「4,5,6月に残業すると税金が高くなる」を勘違いしている人がいます。そのためこの時期は残業をしない人が多くなります。この3ヶ月間にあまり稼ぐと手取りが減ってしまうのは間違いありませんが、内容が間違っています。正確には「社会保険料が高くなる」です。今回の記事で税金と社会保険料について正しく理解してもらえればと思います。

まず税金について確認しましょう。サラリーマンでも自営業者でも共通しているのは、収入が多くなるほど税金が高くなるということです。ここでいう税金とは所得税と住民税をさします。
まず所得税の算出について見てみましょう。所得税は1月1日~12月31日の所得に対して課税されます。所得の考えは基本的に「収入―経費」です。この所得に対して税金がかかります。 

個人事業でモノを作って売っているとすると、収入は売り上げになります。経費は材料費であったり、モノを作るのに要する道具代であったり、運搬費用などですね。売上(収入)から材料費等(経費)を差し引いたものが所得となります。

一方サラリーマンの場合はどうでしょう?サラリーマンには基本的に経費というものがありません。しかし給与所得控除というものがあり、これが概算で経費として認められているものになります。スーツ、靴、その他事務用品費、身だしなみのための散髪代などにお金がかかるからですね。

その他基礎控除、配偶者控除、扶養者控除などが控除され、最終的に課税所得金額が算出され、これに税率をかけることによって税金が決まります。税率は以下のようになっています。

所得税速算表 国税庁HPより抜粋

所得金額が高いほど税率が高くなる仕組みになっており、これを累進税率といいます。個人事業の場合、1月1日~12月31日の所得を計算し、2月16日から3月15日の間に確定申告することによって、所得税を算出し納税します。つまり個人事業の場合は所得税を後払いすることになります。

一方サラリーマンの場合はどうでしょう?雇用主は従業員に代わって所得税、住民税を納める義務があります。そのためサラリーマンは毎月の給与から所得税、住民税が差し引かれているわけですね。
しかし所得税は1月1日~12月31日の所得が決まってから初めて算出できます。本来は毎月の給与から差し引く所得税は計算できないわけです。
では毎月差し引かれる所得税はどうやって算出してるのでしょう?結論としては「この給与ならだいたい所得税はこれくらいになるだろうな」と仮定した額を差し引いている形になります。これは国税庁の定める給与所得の源泉徴収税額表から算出しています。

※給与所得の源泉徴収月額表はこちら ⇒ 令和4年分 源泉徴収税額表
 扶養控除等申告書を提出している場合は甲欄、提出していない場合は乙欄の数字になります。日給や週給、日割り計算で支払う給与は日額票を用います。

しかしこれはあくまで仮定した額を源泉徴収しているので、実際に1年間の所得から算出される所得税とは異なることになります。そのため年末調整をし、そのズレを補正するわけですね。

住民税も基本的な考えは一緒です。違うところは住民税は前年の所得を元に計算されること一部の控除が所得税の場合と金額が異なること(生命保険料控除、地震保険料控除など)、税率は一律10%であることなどです。
個人事業の場合は確定申告を行うと6月頃に「納税額の通知書」が市区町村から送られてきます。
サラリーマンの場合は前年の所得によって決まった住民税が6月から来年の5月にかけて天引きされます。

ここまでで所得税の計算、天引きについては分かりましたでしょうか?前述したように所得税はその年の1月1日~12月31日の所得によって決まり、住民税は前年の1日1日~12月31日の所得によって決まります。つまり4,5,6月の給与で税金が決まるというのは間違えです。あくまで年間の所得によって決まるわけですからね。


では社会保険料はどうでしょうか?実はこれが4,5,6月の収入によって決まります。
※社会保険料とは健康保険料(健康保険料、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料)、年金保険料(厚生年金保険料、国民年金保険料)、介護保険料、雇用保険料の総称です。
社会保険料の決まり方について詳しく見てみましょう。
社会保険料は収入に相当する標準報酬月額に税率をかけることによって算出します。
標準報酬月額とは社会保険料を簡便にするために、報酬の月額を切りのよい幅で区分して等級を定めたものです。標準報酬月額を決定するタイミングは以下の3つになります。

・入社時決定
新卒入社や転職で新たな会社に入った時に決めます。これはその人が「だいたいこれくらいの給与になるだろうな」と想定した給与で決まります。

・定時決定
これは年に1回行われます。4,5,6月に支払われた給与の総額を3で割り、算出された平均額を標準報酬月額表に当てはめ、標準報酬月額が決まります。ここで決まった標準報酬月額が1年間使用されることになります(その年の9月から翌年の8月まで使用されます)。

・随時改定
年の途中で昇給や降格、時短勤務への変更などで大幅に給与額が変更した場合、標準報酬月額を見直すことがあります。


標準報酬月額表は健康保険では50等級に分類され、厚生年金では32等級に分類されます。
標準報酬月額表はこちらから確認できます ⇒ 全国健康保険協会 令和4年度保険料月額表
※健康保険の税率は都道府県によって異なり、厚生年金の税率は全国一率18.3%です。

ここまでの説明で分かったと思いますが、4,5,6月にあまり収入が多すぎると、定時決定による標準報酬月額が高くなり、これが9月から1年間適応され、結果的に多くの社会保険料を払う羽目になります。
※個人事業の場合は国民健康保険料は前年の所得を元に算出され、国民年金保険料は収入によらず定額です。

ここで標準報酬月額表をもう少し見てみましょう。標準報酬月額の等級は報酬月額によって決まります。

この報酬月額とは1ヶ月に支払われる給与の総額です。基本給の他に役割手当、家族手当、家賃補助、通勤費、そして残業代などが含まれます。通勤費は所得税法では月15万までは非課税ですが、標準報酬月額の計算には含まれます。
※報酬月額には臨時に支給されるものは含まれません(祝い金、出張費など)。

社会保険料の算出方法は分かりましたでしょうか?個人事業の場合は収入は自分でコントロールしますが、サラリーマンは自分でコントロールできるのは残業代くらいしかありません。結果として「4,5,6月はあまり残業するな」というのは正しいでしょう。ついでに言うなら通勤費が多いとそれだけで不利ですね。なるべく近場で勤務している人の方が優遇されていますね。
厚生年金保険料は標準報酬月額が高ければ、将来の年金額に反映されますが、健康保険料や雇用保険料は支払い額が高くても得をすることは1つもありません。かしこく手取りを増やすなら4,5,6月は残業せず、所得税、住民税については節税するのが一番です。正しい知識をつければきっとできます。また色んな情報を発信してきたいと思います。

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