前回、前々回と高額療養費制度について説明してきました。今回の記事では請求の手続きと、その他注意点について学びましょう。
高額療養費を請求する際は基本的に保険者に行います。高額療養費制度は自己負担限度額を超えた分を、保険者が支払ってくれる制度だからですね。それぞれの保険の場合の窓口は下記のようになります。
組合けんぽ⇒健康保険組合
協会けんぽ⇒全国健康保険協会
国民健康保険⇒市区町村の国民健康保険の窓口
後期高齢者医療保険⇒後期高齢者医療広域連合
※各都道府県の協会けんぽと後期高齢者医療広域連合の問い合わせ先はこちらになります ⇒ 全国健康保険協会支部 後期高齢者医療広域連合の連絡先(高額療養費関係)
必要となる書類はそれぞれの窓口で異なりますが、共通しているのは申請書と保険証のコピー、領収書でしょう。手続きを行ってから、実際に高額療養費が振り込まれるまでは3~4ヶ月程度かかります。そのため限度額適用認定証を取得しておくことをお勧めします。
限度額適用認定証を医療機関の窓口に提出すると、窓口での支払額が自己負担限度額までとなります。※自己負担限度額以上の額については医療機関が請求してくれます
そのため一時的に高額な医療費を立て替える必要がありません。限度額適用認定証は高額医療費の請求をする窓口で取得できます。
※70歳以上で所得区分が「現Ⅲ」「一般」の人は、高齢受給者証が限度額適用認定証の代わりになるため、限度額適用認定証は不要です。
ただし注意点があります。限度額適用認定証による窓口での支払い減は、病院・薬局ごと、入院、外来ごとになります。2つ以上の病院・薬局で限度額適用認定証を提示した場合、それぞれの窓口で自己負担限度額までの支払いとなります。この場合、申請により高額療養費が支給されます。
例えば上の図のような場合、被保険者が71歳、区分は一般だったとします。
この場合、薬局での支払いは外来とみなされるので、自己負担した額は入院:10万円、外来:5万円とうことになります。70歳以上は全て合算できるので、この場合の自己負担限度額は57600円となります。
しかし限度額適用認定証を窓口で提示しても、それぞれの窓口で限度額までの支払いとなるので、病院で入院費用として57600円、外来費用として18000円、薬局での薬代で18000円支払いが必要になります。その後高額療養費の申請をすることによって、
(57600+18000+18000)-57600=36000円
が払い戻されることになります。
前々回の記事で3ヶ月分のテリボン皮下注オートインジェクターを処方された患者さんは、薬局での支払いが18000円でした。薬代だけで18000円を超えたので、窓口の支払い額が18000円で止まった形です。
※ちなみにこの患者さんは高齢受給者証を持っていたので、限度額適用認定証はありませんでしたが、支払いは18000円で済みました。
しかし病院にも受診しているので、診察代は払っているはずです。薬局での薬代は、病院の外来と一緒になるので、高額療養費の申請をすれば病院の診察代分の高額療養費は支払われるでしょう。(ただし診察代だけでなので僅かな金額です。手間をかけて、3ヶ月程度後に診察代が戻ってくるだけなので、やる価値は小さいですね)
2021年10月からマイナンバーカードが健康保険証として利用できます。病院や薬局の窓口の顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードをかざしてオンライン資格確認をします(これをマイナ受付といいます)。これにより限度額適用認定証がなくても、窓口で自己負担限度額を超える支払いをする必要が無くなります。
マイナンバーカードを健康保険証として利用するには、マイナポータルにより健康保険証利用の申し込みが必要になります。スマホで簡単にできます。詳しくはこちら ⇒ マイナポータル
最後になりますが、高額療養費の対象とならない支払いについて知っておきましょう。
高額療養費制度はあくまで公的医療保険の対象となる治療を対象としています。そのため保険適応外の費用には適応されません。具体的なものとしては
・入院における食事代 ・差額ベッド代 ・先進医療 ・インプラント、美容整形などの自由診療
があります。これらの費用には使えないので注意しておきましょう。
ここまでの3回の記事で高額療養費制度は理解できたでしょうか?実際に見て分かったと思いますが、日本は公的医療保険制度がしっかりしているので、よほどのことが無い限り民間医療保険は不要と分かります。民間医療保険に入るより先に、限度額適用認定証を取得したり、マイナンバーカードを保険証利用できるようにした方がよほど意味があります。
(先進医療の保証を付けたり、入院の際に個室を望むなどの考えがある人には民間医療保険は有効です)
70歳以上になると1ヶ月の医療費の自己負担限度額は、一般の人なら世帯で57600円です。こういった事実をよく知っておくことで、老後の余計な心配をなくしていきましょう。

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