高額療養費制度を詳しく理解 ②70歳以上の場合

社会保障制度

前回の記事で高額療養費制度の70歳以下の場合について説明しました。今回の記事では続きとして70歳以上のケースを紹介していきます。

まず自己負担限度額について見てみましょう。70歳以上の自己負担限度額は以下のようになります。

厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」より抜粋

70歳未満では自己負担額21000円を超えたものしか同一人合算、世帯合算できませんでした。しかし70歳以上になると金額に関係なく、全て同一人合算、世帯合算ができます。
そのため70歳以上では基本的に世帯単位で上限額が定められていると思ってよいでしょう。

※世帯合算では同一の公的医療保険に入っていないといけないので、夫:健保、妻:国保などのケースでは使えません。また75歳以上になると後期高齢者医療保険の被保険者になるので、夫婦ともに職についていなく、夫:75歳、妻:72歳などのケースでも対象外です。
夫婦ともに後期高齢者医療保険の被保険者となった場合は世帯合算できます。

一般と住民税非課税世帯では外来のみの上限額が別途設けられています。ただし外来のみの上限額は個人のみに適応され、世帯合算はできません。
また多数回該当については以下のようになっています。

前回の記事の復習ですが、直近12ヶ月間に3回以上、高額療養費の支給を受けている場合、4回目以降が多数回該当となり、自己負担上限額が下がります。しかし一般、住民税非課税世帯の「外来(個人ごと)」で高額療養費の支給を受けた場合は、多数回該当の回数にはカウントしません。
※現役並みの人が、外来のみで自己負担上限額に達して高額療養費の支給を受けた場合は、多数回該当の回数に含みます。

前回の記事、今回の記事で高額療養費制度と世帯合算については理解できたでしょうか?
世帯合算については、ここまでの説明で紹介したのは世帯全体が70歳未満、あるいは70歳以上のケースでした。しかし実際は同一世帯に70歳以上の人と、70歳未満の人が両方いる場合が多いでしょう。この場合はどうなるでしょうか?この場合の計算を解説していきます。

・まず始めに70歳以上の人に支給される高額療養費を計算します

①70歳以上の人の1ヵ月にかかった外来の自己負担額から、高額療養費を計算します。
上の図の場合は外来の自己負担は父の5万円と母の3万円です。
70歳以上は外来のみの自己負担上限額(今回の場合は18000円)がありますが、これは個人単位となります。そのため
父:50000-18000=32000円
母:30000-18000=12000円 
合計 32000+12000=44000円 となります。

②70歳以上の人の1ヶ月にかかった入院と外来の自己負担額から、高額療養費を計算します。
①より父と母の外来の自己負担はそれぞれ18000円なので、入院、外来の自己負担の合計額は 20万+1.8万+1.8万=23.6万円
70歳以上の一般の区分の自己負担限度額は57600円なので
23.6万ー57600=178400円 となります。

①と②の合計が70歳以上の人に支給される高額療養費です。

次に70歳未満の人と世帯合算します
70歳以上の人は自己負担額21000円未満でも世帯合算できます70歳未満の人は自己負担額が21000円未満では世帯合算できません。ここを気を付けましょう。(娘の自己負担分は21000円未満なので世帯合算されません)
上記の場合、世帯合算した医療費は 100万(世帯主)+125万(父)+15万(母)=240万円 です。これを70歳未満の高額療養費の計算式にあてはめると
80100+(2400000-267000)×1%=101430円 これが世帯での自己負担上限額です。
世帯での自己負担した分は 30万(世帯主)+57600(父母)=357600円 です。
そのため 357600ー101430=256170円 これが高額療養費として支給されます。

ここまでの70歳以上の高額療養費、70歳未満の高額療養費を合計した
44000+178400+256170=401600円 が高額療養費として支給されることになります。


さて前回と今回の記事で高額療養費制度の概要と、世帯合算について説明してきました。理解するのは結構大変なので、何度も読み直して頂ければと思います。次回以降の記事で実際に支給を受ける際の注意や、手続きについて紹介していきます。

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