2021年12月に税制大綱が発表され、相続税と贈与税の一体化が噂され、暦年贈与制度の廃止(年間110万円までの贈与は非課税)が廃止になるのではと心配されました。結局今回の改正は見送られ暦年贈与制度は残っていますが、いずれは暦年贈与制度の廃止または相続時精算課税制度の強制などが予想されます。そのため今のうちに相続税対策で出来るものは行っていた方がよいかもしれません。今回の記事では来年までの制度である、教育資金の一括贈与制度について確認しておいてほしいと思います。
その前に暦年贈与制度についておさらいしておきましょう。
暦年贈与制度は年間110万円までの贈与は非課税となる制度です。1月1日~12月31日までの間に贈与した金額が110万円までは贈与税がかかりません(基礎控除ともいいます)。これによって毎年少しずつ子や孫に贈与することによって相続財産を減らしていけるわけですね。
※ただし毎年同じ金額をずっと贈与していると定期贈与契約とみなされ、贈与が始まった年に「定期金に関する権利」を贈与したとして、課税されてしまう事があります。例えば10年間、毎年110万円を贈与したとすると、贈与の開始した年に1100万円の定期金に関する権利を贈与したとされ、これが課税対象となる可能性があります。定期贈与契約とみなされないためには贈与の都度、贈与契約書を交わしたり、毎年ではなくする、贈与する金額を毎回変えるなどの対策が必要となります。
ただし暦年贈与を行っても相続が始まると、相続開始3年以内の贈与財産は相続財産に加算されます。例えば5年間毎年100万円を贈与したのち相続が開始すると、直近3年分の贈与300万円は相続財産に加算されることになります。

これは実際に相続した者のみ対象となります。生前贈与を受けたのち相続を受けなかった場合は対象外です。例えば孫に生前贈与を行って、相続が発生して配偶者と子供に相続が発生したとします。この場合孫は財産の相続を受けていないので、生前贈与を受けた分は相続税の対象外のままですね。
これまでの説明で暦年贈与制度は理解できましたでしょうか?税制大綱ではこの暦年贈与制度の廃止、ないしは相続財産への加算が3年以上になるのでは?と言われていました。先述したように今回改正されませんでしたが、いずれは何らかの方法で課税が強化されるでしょう。そのための対策の1つが教育資金の一括贈与です。これらを詳しく見てみましょう。
教育資金の一括贈与は直系尊属(父母や祖父母)から教育資金を一括して贈与する場合、1500万円まで(学校等以外に支払う金銭は500万円まで)が非課税となる制度です。これは2023年3月31日までに契約したものが対象となります。「一括して」というのが特徴です。必要な教育費をその都度贈与するのは社会通念上常識の範囲の金額であれば、扶養の範囲と考えられ、非課税となります。祖父母が孫のために一括して大きな金額を贈与した場合が対象となります。
実際にこの契約を行うには信託銀行等に教育資金口座を開設し、教育資金非課税申告書を金融機関経由で税務署に提出します。※教育資金非課税申告書は信託銀行が用意してくれます

教育資金口座からの払い出しを行った場合は、その支払いにあてた領収書等を金融機関の営業所等に提出します。

これにより教育資金1500万円まで(学校等以外に支払われるものに関しては500万円まで)が非課税で贈与可能となります。
それではこの制度をもう少し詳しく見てみましょう。
まず対象となる教育資金についてです。学校等に支払われるものと、学校等以外に支払われるものには以下のようなものがあります。
・学校等に支払われる金銭
入学金、授業料、通学費、給食費、学用品代、修学旅行費など
・学校等以外に支払われる金銭
塾、水泳、ピアノ、そろばんなどの習い事の費用
またこの制度は全ての人が受けられるわけではありません。受贈者の所得制限があります。受贈者の前年の合計所得金額が1000万円を超える場合はこの制度を受けられません。
この契約は以下の事項に該当した場合に終了します。
・受贈者が30歳に達したとき
・受贈者が死亡したとき
・口座残高が0になり、契約終了の手続きをしたとき
※受贈者が30歳に達した場合でも、学校等に在籍している場合と教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合は、金融機関への届け出により信託期間を延長することが可能です。延長後は、その期間終了時または40歳のいずれか早い日が終了日となります。
契約終了時に口座残高が残っていた場合は、贈与税が課せられます。この場合は契約終了の手続きをした年に贈与があったとされます。
※受贈者が死亡した場合は贈与税は課せられません
契約の最中に贈与者が死亡する場合もあります。このケースについて見てみましょう。贈与者が死亡した際に残高がある場合は、相続財産に加算されます。
ただし以下の場合は相続税の課税対象になりません。
・受贈者が23歳未満であるとき
・受贈者が学校等に在籍しているとき
・受贈者が教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講しているとき
ここまでをまとめると以下のようになります。

この制度は暦年贈与制度と併用可能です。
その他にも相続時精算課税制度、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税制度とも併用が可能です。
最後にこれは信託契約なので当然信託報酬がかかると思う人もいるかもしれません。結論から言うと信託報酬はかかりません。その他事務手数料や払い出し費用も無料です。信託した金銭は運用されるため、信託報酬は運用益から支払われます。そのため顧客が個別に負担する必要がないわけです。運用益が十分に得られなくても、元本保証なので拠出金が減ることもありません。
相続税は高く、3代続けば相続財産は無くなるとも言われています。そんな中、このような制度があるので、使える人は是非使用すべきでしょう。延長されるかもしれませんが、今のところ2023年3月までの制度なのでお早めにご検討ください。

にほんブログ村
記事が良かったと思ったらランキングの応援をお願いします。

メインブログもよろしくお願いします。
コメント