財形貯蓄 向いているケース、向かないケース

ライフプランニング

毎年の事ですが会社から財形貯蓄の案内が送られてきました。私は利用していませんが、周りの人間はほとんどが財形貯蓄自体を知りません。知っていたとしても、給与天引きで貯蓄が出来るという事だけです。間違ってはいないのですが、もう少し詳しく知ることで自分に向いているかどうか分かると思います。今回の記事では財形貯蓄について説明します。


財形貯蓄制度は勤労者の財産形成を促進するために、勤労者財産形成促進法によってできた制度です。勤労者が事業主の協力を得ることによって、賃金から一定の金額を天引きすることで確実に貯蓄が出来る制度です。
銀行、信託銀行、証券会社、生命保険会社などで取り扱っています。
※天引きされる給与は預貯金としてだけでなく、有価証券(国債、投資信託)、生命保険、損害保険などとすることも可能です。
預貯金、有価証券によるものを預貯金型、生命保険、損害保険によるものを保険型といいます。
(生命保険では貯金型の生命保険、損害保険では積立型の傷害保険などを用います)
※預貯金では元本割れリスクはありませんが、有価証券、保険型では商品によっては元本割リスクがあります。

財形貯蓄は勤労者が会社を介して行うため、勤労者個人で直接申し込むことは出来ません。また申し込むことが出来るのは会社が取り扱っている金融機関等に限ります。そのためそもそも会社が財形貯蓄の制度を取り扱っていない場合は申し込むことが出来ないので注意しましょう。


財形貯蓄の概要は何となく理解できたでしょうか?
次に財形貯蓄の中身について見てみましょう。財形貯蓄は一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3つがあります。それぞれの特徴を見てみましょう。

・一般財形貯蓄
勤労者なら誰でも加入できます。
資金用途は特に定められていません。”これといった目的はないけど、とりあえず貯蓄しておこう”とか、”手元にお金があると使ってしまうから、強制的に貯蓄してもらおう”といった人には最適といえます。
原則3年以上の積み立てが条件ですが、積み立て開始から1年たてば自由に払い出しできます。また払い出しによるペナルティもありません。
そのため最も自由度の高い財形貯蓄といえます。ただし非課税などの優遇制度はありません。

・財形住宅貯蓄
住宅の取得・増改築(75万円以上)を目的としたものです。加入は55歳未満の勤労者に限ります。
財形年金貯蓄と合わせて元利合計(元本+利息の合計)550万円までの利息が非課税になります。
※保険型では払込合計金額550万円まで。
積立期間は5年以上となっています。
※ただし住宅の取得・増改築費用として使う場合は5年以内でも非課税となります。住宅はいい物件がいつ見つかるか分からないからですね。

目的外の払い出しをすると、この非課税制度が受けられなくなり、5年以内に支払われた利息に対して20.315%の源泉分離課税が課せられます。
なお災害や疾病などの理由で払い出す場合は、非課税となることがあります。

”○○年以内に住宅を取得、または増改築”といった明確な目標のある人に向いているといえます。

・財形年金貯蓄
老後の資金つくりを目的としたものです。加入は55歳未満の勤労者に限ります。
満60歳以降に5年以上20年以内の年金受け取りとなります。※ただし保険型の場合は終身年金も可能です。
積立期間は5年以上となっています。
預貯金型は財形住宅貯蓄と合わせて元利合計550万円までの利息が非課税となります。
保険型は払込保険料385万円までの差益が非課税となります。

目的外の払い出しをすると非課税制度が受けられなくなり、預貯金型については5年以内に支払われた利息に対して20.315%の源泉分離課税が課せられ、保険型については差益について一時所得として課税されます。
※一時所得は(差益-50万円)×1/2について課税されます。50万円の控除があるので、実際に課税されることは少ないでしょう。(50万円以上差益が出ることは少ないです)
こちらも災害や疾病などの理由で払い出す場合は、非課税となることがあります。

ここまでをまとめると以下のようになります。

以上財形貯蓄の制度について説明してみました。
さてこれらの制度はどのようなケースで有効か見てみましょう。


・手元にお金があると使ってしまう場合
このタイプの人には最も適した商品といえます。給与から天引きというのが最大の特徴ですね。
つみたてNISAで自動積立設定などの方法もありますが、あくまで給与が支払われた後に指定された日に自動積立が行われます。浪費癖のある人なら給与が振り込まれてすぐに使ってしまうことも考えられます。しかし財形貯蓄なら給与が振り込まれる前に自動的に積み立てられ、また払い出しするにも複数の書類が必要になったりと手間がかかります。このように強制的に貯蓄させられるのがメリットといえるでしょう。
特に目的が無い場合は一般財形貯蓄でよいのではないでしょうか?

・住宅取得やリフォームを考えている場合
財形住宅貯蓄は悪くないかもしれません。
1つは強制的に貯蓄できること、もう1つは非課税制度ですね。
しかし非課税制度といっても、利息に対する税金が非課税になるだけです。現在メガバンクの普通預金の金利が0.001%、定期預金の金利が0.002%程度です。例えば預貯金型を選んで500万円にかかる金利が0.002%とすると、利息はたったの100円です。本来ならこの金利に20.315%の税金がかかるわけですが、これが非課税になるだけです。非課税といってもその優遇は雀の涙程度でしょう。

しかし実はもう1つメリットがあります。
財形貯蓄を1年以上継続、残高が50万円以上あれば、残高の10倍まで融資を受けることができます(上限は4000万円、住宅の購入・増改築価格の90%まで)。財形住宅貯蓄だけでなく、一般財形貯蓄、財形年金貯蓄に加入している場合でも利用できます。
この融資は長期・低金利の住宅ローンであり、財形持家転換融資といいます。
財形持家転換融資は5年ごとの固定金利です。他の固定金利に比べて金利が低い傾向にあります(2022年7月時点で0.82%)。さらに令和5年3月受付分までは子育て世帯に対して金利を0.2%優遇(5年間のみ)する子育て勤労者支援貸付金利引下げ特例措置があります。
固定金利としては有利な金利ですが、民間銀行の変動金利なら現在0.3%代から存在します。変動金利には勝てませんが、固定金利がいいという人には選択肢としてありでしょう。
また財形持家転換融資は事務手数料、ローン保証料が無料です。ただし団体生命保険には加入していませんので、加入する場合は別途費用が必要になります。
この辺を総合的に判断して決める必要があります。

・老後の資金作りとして活用する場合
財形年金貯蓄に関してはあまりお勧めしないですね。
非課税の優遇制度もありますが、預貯金型は財形住貯蓄と合わせて550万円、保険型は払込保険料385万円までです。また前述したように、そもそも非課税となる金額が少なすぎます。
また払い出しは60歳以降の年金に限られています。これならiDeCoなどで運用した方が非課税の恩恵が大きいです(iDeCoは払込額の全額が所得控除、運用益が非課税)。
ただし1つ財形年金貯蓄が勝っているところがあります。それは払い出し時の課税の有無です。
確定拠出年金は年金受け取りの場合は雑所得として課税対象になります。一方財形年金貯蓄の払い出しはあくまで貯蓄の分割払いとなりますので、課税対象になりません。
あくまで年金受け取りを希望し、かつ課税されるのが嫌な人にとっては選択肢の1つになるでしょう。

個人的には財形年金貯蓄は利用しないですね。確定拠出年金の方が非課税の恩恵は大きいですし、上手に取り崩せば課税もあまりされません。
参照記事 ⇒ 確定拠出年金の出口戦略


ここまでを総括します。
まず財形貯蓄は資産形成にはあまり向いていません。
つみたてNISAやiDeCoを活用した方が確実に資産形成できるでしょう。
ただしとにかくリスクを負いたくないといった人には、預貯金型の財形貯蓄は向いているといえます。(保険型や有価証券によるものは元本割れリスクあり)
あくまでメリットは”強制的に貯蓄できる”ことです。しかも給与天引きなので、本人が貯蓄していることすら忘れている状態で貯蓄が進みます。これこそが財形貯蓄の醍醐味でしょう。すぐにお金を使ってしまう癖のある人は活用すべきです。

前述したように住宅の取得やリフォームを考えている人は選択肢の1つとしてはありでしょう。ただし固定金利派の人ですね。個人的には圧倒的安さの変動金利を選択し、住宅ローン減税を受けるのがいいと思います。住宅ローン減税の控除率は0.7%なので、変動金利なら逆ザヤになり、ローンをした方が得をします。
⇒ 住宅ローン減税 2022年からの改正

財形年金貯蓄はあまり好きではないです。
資産形成には非課税メリットが小さいです。とにかく税金を取られたくないのなら、iDeCo+財形年金貯蓄はありかもしれません。iDeCoは一括受け取りで退職所得控除を利用し、ほとんど課税されずに受け取り、年金受け取り(分割受け取り)は財形年金貯蓄で積み立てた分を5~20年かけて非課税で受け取る形です。

財形貯蓄の保険型なら生命保険・損害保険共に保険期間中(財形年金貯蓄については年金開始前)に災害死亡・災害高度障害の場合、払い込み保険料累計額の5倍相当額が積立配当金と共に支払われます。
いわゆる積立型の生命保険と一緒ですが、財形住宅貯蓄においてはありといえばありですかね?

住宅購入前には途中で死亡した時に備えられますし、住宅購入時は団体信用生命保険に加入してローンを組めば、自分が死んだ時はローン残債が0になり、家族に家を残せます。
※財形持家転換融資の場合は団体信用生命保険料を別途負担する必要があります
住宅購入後は死亡保険金は少なくて済むので、安い逓減型の掛け捨て保険に変えるとよいでしょう。
〇〇年以内に住宅を購入という明確な目標がある人には選択の余地ありです。


人のリスク許容度は違いますので、資産形成の正解は一概には言えません。しかし一部の人には財形貯蓄も有効なので、今回の記事と過去の資産形成の記事を参考して、ご自身に合った方法を見つけてもらえればと思います。

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