”負”動産は早めに手放さないと大変!

相続・贈与

土地や建物など不動産は株や債券に比べて流動性が低く、処分が大変な一面があります。上場株式なら流動性を確保するための法整備がされていますし、国債なら発効から1年すれば国に買い取ってもらえます。しかし不動産はそうはいきません。買い手がいないと手放すことはできないので、広告を打って買い手が現れるのを待つしかありません。自分自身が買った不動産ならまだいいですが、相続によって流動性の低い不動産を手に入れてしまうと大変です。今回はこれを解決するために、私自身が体験した実話を元に解説していきます。

昨年私の母が病気で倒れ入院しました。
※メインブログの記事です ⇒ 血管性認知症
幸い今は退院して生活しておりますが、長くはないと思いますし、また認知力の低下も目立ちます。今後の相続に備えて準備をしておくことにしました。結構な預貯金をもっていましたが、相続税対策はいくらでもあります。(この辺はまた別記事にしていきたいと思います)
しかし一転問題点が発生しました。とある地方に土地を所有していました。聞くところによると祖父から相続した土地であり、温泉を引くことができる土地だそうです。しかし一度も使ったことも見たこともなく、ただ永遠と固定資産税と管理会社への管理費を払っているようでした。その事実に絶句しましたが、今更文句を言ってもどうにもなりませんし、何とかしなくてはなりません。

まずは所有権の確認です。本当に母が所有者となっているか確認しないといけません。これは登記簿を見ればわかります。登記簿は法務局に行けば取り寄せられますが、現在ではネットでも取得可能です。
登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと

これに登録してID、パスワードを取得します。土地や建物ならその住所を入力して申請すれば、数日で普通郵便で登記簿が送られてきます。登記簿の権利部(甲部)に所有権者が載っています。
※会社の登記簿を取得すれば会社の資本金の額や発行可能株式数、発行済株式数、役員の氏名なども分かります。
結果、祖父が取得して母が相続してもので間違いありませんでした。

次にその土地の現状確認です。亡くなっている祖父以外誰も見たことが無く、また場所も離れているため、現地視察に行くのが困難です。この場合地元不動産屋に連絡をします。将来相続の対象になるであろう土地がそちらの不動産屋の地元にあること、また可能であればそちらの不動産屋を使って誰かに譲渡したい旨を説明します。不動産屋も仕事になるかもしれないので、現地調査してくれます。
後日連絡が入りました。山林の区画の一画(どうやら別荘地のようでした)であり、とても有効活用できそうにありません。さらに地元の似たような土地の売り出しの広告を送ってもらいましたが、400㎡以上の地積で30万円で売りに出しており、それでも買い手が見つかっていない状態です。

とても買い手が見つかりそうな状況ではないので、自治体への寄贈を検討しました。条件が合えば土地を自治体に寄贈することも可能です。しかしこれはかなりいい土地でないと実質無理でしょう。自治体としてはその土地からの固定資産税は重要な収入源です。また引き取ったとしても管理コストがかかる土地を引き取っても困るだけです。一応自治体に寄贈を申し入れましたが、案の定断られました。


ここまででかなり手詰まり感がありましたが、最後に土地の管理会社に引き取ってもらえないか相談しました。一応別荘地(といっても周りに別荘はたっていませんでしたが)なので、土地を管理している会社がありました。管理会社に連絡をして、以下の事情を説明します。

・一度も使用したことがないこと
・今後も使用する予定が無いこと
・固定資産税・管理費だけ払い続けている状態であること
・譲渡でも贈与でもいいから手放したいこと

責任者の方が相談にのって下さり、その土地を管理会社で買い取ってくれることになりました。しかし管理会社もボランティアで動くわけにはいきません。引き取った土地を利用できなくてはなりません。その土地は斜形地であり、このままでは有効活用が難しい状態です。平地にすれば活用できそうなので、整地費用をこちらで負担することになりました。

管理会社が司法書士を手配して下さり、様々な書類を手配し大変でしたが、無事引き取ってもらうことが出来ました。最終的に整地費用をこちらが負担しているので約200万円の赤字になりました。しかしこれを相続すると、今度は相続したものが永遠と固定資産税と管理費を支払うハメになります。
相続放棄する手段もありますが、相続放棄する場合は全ての相続財産を放棄しなくてはなりません。一部の財産を放棄をいったことはできません。
また相続を放棄しても誰かが別の人が相続しない場合は、管理義務だけ残ります。

民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。


相続人が自分だけである場合や、複数人の相続人がいても全員で相続放棄して、管理する者がいない時は、管理義務だけ残ります。管理義務が残ると、例えばその土地でトラブルが起きると管理者責任を問われることになります。

以上に事を踏まえると活用の使用が無い不動産、つまり”負”動産は早めに手放すにこしたことはありません。少なくとも所有しているだけで固定資産税を取られ続けるハメになり、手放すまで永遠に続きます。不動産を所有する時に最も注意しなくてはならないのは流動性です。場所がよければいくらでも買い手はつきます。
参照記事 ⇒ 1に立地、2に立地、3に立地

父母や祖父母が使い道のない土地や建物を所有している場合は早めに対策をうつべきでしょう。またできれば自身の住宅を購入する際も、その後の買い替えや相続まで見越して物件を選びたいものです。その方法として今回の記事が参考になればと思います。

なお令和5年4月1日より民法940条は以下のように改正されます。

民法940条
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第925条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。


実際に占有していない場合は管理責任を免れることになります。また令和5年4月27日より相続土地国庫帰属法が施行されます。条件が合えばいらない土地を国に返すことが出来ます。これに関する記事は後日書く予定です。
これらの知識をフル活用して、”負”動産から逃れてくれると幸いです。

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