相続土地国庫帰属法 活用したい場合は事前準備を!

相続・贈与

前回の記事で相続した不要な土地の処分について書きました。実は来年からこのような土地を、条件さえ合えば国に返還できる法律が施行されます。それが相続土地国庫帰属法です。実際に国に返還するにはそれなりにハードルが高いので、今回の記事で予習して、該当する人は来年に備えて頂きたいです。

まずこの法律ができる背景について知りましょう。
現在所有者不明の土地、あるいは所有者が判明してその者に連絡がつかない土地が日本中に沢山あります。その原因としてあるのは相続登記が義務化されていないことにあります。また人口の都心集中により地方の人口が減少し、地方での土地所有の意識およびニーズが低下しております。

このような背景から、被相続人の土地が相続登記されないまま放置されることが多いのが現状です。相続税の納税期限は相続発生の翌日から10ヶ月以内と期限がありますが、遺産分割協議の期限は存在しません。(遺産分割協議が行われるとその効果は相続発生時に遡って発生します)
遺産分割協議が行われないと、相続財産は相続人の共有物になります。そのままさらに相続人が死亡して次の相続が発生すると、その相続人の共有物になるため、共有者がどんどん増えていってしまいます。

土地の共有者が増えると管理責任は誰にあるか曖昧になり、土地の収用や区画整理をする際に大きな障害となりますね。これを解消するために令和6年4月1日より不動産の相続登記が義務化されます。詳しくは別記事で書こうと思いますが、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請しなくてはならなくなります。(これを怠ると過料の罰則付きです)

相続登記を義務化し、所有者不明の土地ができるのを予防するだけでなく、相続により取得した土地で条件を満たすものは国に返還できる制度が作られます。これが相続土地国庫帰属法です。相続土地国庫帰属法ができる背景が分かったところで、その中身を見てみましょう。

・申請できる者
まずこの制度は相続または遺贈により取得した土地を国庫に返すことが出来る制度です。つまり相続や遺贈によって土地を取得した者のみが申請できます。
※土地が複数人の共有となっている場合は、共有者全員で申請しなくてはなりません。
自分で購入したり、贈与により取得した土地は対象外ですので、ここは気を付けましょう。


・土地の要件
次に国に返せる土地には様々な要件があり、全ての条件をクリアしたものしか国に返せません。具体的には以下の項目に1つも該当しない土地が対象となります。
①建物がある
建物がある土地は対象外です。更地でなくてはなりません。これは事前に建物を撤去しておけば大丈夫です。

②担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている
国に返すわけですから、その土地が担保になっていたり、抵当権や借地権が設定されていたのではいけません。国に返して利用の円滑化を図るのが制度趣旨なので、それを妨げる権利が設定されていてはならないわけです。これも事前に抵当権の抹消登記をしたり、借地権の解消をしたりとあらかじめ対処しておくことはできます。

③通路その他の他人による使用が予定されている
これも利用の円滑化を妨げるからですね。その土地を利用する人と事前に話し合って解消しておくのが良いでしょう。しかし位置指定道路などに指定されていると困難です。利害関係者との話し合いで同意を得たら、市町村に位置指定道路の廃止を相談すれば可能性はあります。

④土壌汚染がある
これも土地の利用ができないからですね。指定調査機関に頼んで調べてもらうことが可能です。 ⇒ 土壌汚染対策法に基づく指定調査機関

⑤土地境界が明らかでない
土地の境界が明らかでない場合は、土地を利用するにあたって、隣接する土地の所有者とのトラブルになる可能性があります。筆界特定制度を利用して、筆界の位置を特定する必要があります。
※筆界 土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線。所有権者同士の合意で変更することはできない。
筆界の特定はその土地を管轄する法務局に相談し、筆界特定登記官に行ってもらいます。担当の法務局はこちらで調べて下さい ⇒ 法務局 管轄のご案内

⑥崖がある
これはどうすることもできなさそうです。

⑦工作物や車両、樹木がある
①と同様に事前に撤去すれば大丈夫です。

⑧地中埋設物がある
地中に埋設物があると地盤が弱くなったり、工事をする際に支障をきたしたりします。登記簿や古地図などから過去にその土地が何に使用されていたかを調べ、必要なら地中調査をするのがよいでしょう。地中調査も埋設物の撤去も民間業者で可能です。

⑨隣地と争いがある
境界線によるものであれば筆界特定制度を利用し、それ以外では裁判で決着をつけておくべきでしょう。

⑩上記以外で管理や処分に多分な費用や労力がかかる
土壌の流出が起きやすかったり、草木が生い茂っている状態などが想定されます。事前に整地したりなどの対策はできそうです。

以上①~⑩を総括すると権利トラブルがなく、処分や有効活用ができそうな更地といった印象です。1つでも該当すると承認してもらえないのでハードルは高いです。しかし事前に知っておけばある程度の対策は打てそうです。


・承認申請⇒審査
申請は法務大臣に行い、承認申請を行うと地方法務局の職員が実地調査に訪れます。調査への協力を求められたら、それに応じなくてはなりません。正当な理由なく調査協力をしないと申請が却下されるので、必ず協力しましょう。


・負担金の納付
承認を受けると10年分の土地管理費相当額の負担金を納付しなくてはなりません。今後国に管理してもらうので、その分の費用を差し出せということですね。実際の費用がいくらになるかは、その土地の実情を加味して決めらますが、法務局が管理費用の参考として以下のものを紹介しています。
現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)
⇒粗放的な管理で足りる原野約20万円、市街地の宅地(200㎡)約80万円


承認されてから30日以内に負担金を納付しないと、承認が取り消されるので速やかに納付しましょう。

相続土地国庫帰属法の概要は理解できましたでしょうか?不動産について興味もなく、自分には関係ないと思っている人も多いでしょうが、父母や祖父母が実は土地を持っていたなんてケースもあります。相続が行われると自分の意志とは無関係に、使い道のない土地の管理に巻き込まれることになります。相続土地国庫帰属法は令和5年4月27日より施行されます。活用しようと思っている人は事前準備をしっかり行い、また意図せず相続により土地を取得してしまった方はこの記事を参考にしてもらいたいです。

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