国税庁が所得税基本通達の修正案を提出

税金の知識

以前の記事で国税庁の所得税基本通達により、雑所得の範囲が明確化され、「その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が 300 万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱う」とされたことを紹介しました。
参照記事 ⇒ 事業所得での申告が困難に① 所得税基本通達の一部改正案 

簡単に言うと、主な収入源でない場合、収入が300万円を超えないと事業所得ではなく雑所得になるということです。事業所得から雑所得になることによって、青色申告が使えなくなったり、損益通算ができなるなり、結果的に大幅な増税につながります。
参照記事 ⇒ 事業所得での申告が困難に② 事業所得から雑所得になった場合の違い

しかしこれは副業を推進する政府の方針に逆行しており、また意見公募をした結果、膨大な数の反対意見が殺到しました。その結果、異例な事ではありますが、国税庁が大幅な修正案を提出しました。今回の記事ではこの内容を紹介します。


国税庁が出した修正案をまとめると以下のようになっています。この内容を解説していきます。

    (国税庁HPより抜粋)


・金額による判定基準が撤廃
前回の所得税基本通達では主な収入源ではなかった場合、300万円以下の収入では雑所得になるというものでした。しかし今回の修正案では金額による判定が行われていません。

・基本的な判定基準は帳簿書類をつけているかどうか
金額による判定基準を撤廃した代わりに、判定基準が帳簿書類をつけているかどうかが求められています。言い方を変えれば 帳簿をつけていない=雑所得 と言えます。
なおこの帳簿書類については青色申告、白色申告のどちらでも問題ありません。しかし過去にも言っているように、帳簿を付けるなら青色申告にするべきでしょう。
青色申告にすることによって、少なくとも以下の特典は受けられます。


・社会通念上、事業といえるかの基準は変わらない
前述した帳簿書類があれば全て事業所得になるのではありません。あくまで社会通念上、事業といえる程度のものであることが必要です。
社会通念上、事業といえるには事業内容に営利性、有償性、継続性、反復性がないといけません。

・帳簿書類があっても個別に判断されることがある
ここまでの内容をまとめると
①社会通念上、事業といえる  ②帳簿書類をつけている
の2点を満たせば事業所得といえます。しかしこの2点を満たしていても、その収入が僅差であったり、事業内容に営利性が認められない場合は、個別に判断されることがあります。※つまり税務調査の対象になる
ここを少し詳しく解説します。

収入が僅差であるとは例年、年間収入が300万円以下で、かつ、主たる収入の10%未満の場合とされています。※例年とは概ね3年程度です
例えば年収500万円の人が副業で収入を得た場合、3年間にわたり収入が50万円未満なら、事業所得か雑所得かが個別に判断されることになります。(年収500万円の10%未満、つまり50万円未満です)
「年間収入が300万円以下で、かつ、主たる収入の10%未満」なので、以前の一律300万円以下に比べれば随分と緩和されていますね。
また”例年”なので、3年にわたりこの金額を下回らなければ大丈夫です。たまに収入が低い年があったとしても、その年だけ雑所得にする必要はありません。
※主たる収入の10%未満であっても、300万円を超えるなら問題ありません

営利性が認められないとは、例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合とされています。3年にわたり赤字が生じていても、それなりに黒字に転換させる取り組みを行っていれば、事業所得と認められる場合があります。しか改善努力が見られないケースでは事業所得にはならないでしょう。
これはあえて赤字を作り、所得税の還付を受けるのを防止するための取り組みです。
過去の記事でも書いたように事業所得は損益通算ができます。これにより給与所得など、他の所得の黒字から損失を差し引くことができ、他の所得による所得税の還付が可能となります。

しかしこれを利用して”なんちゃって事業”で赤字を計上し、給与所得による所得税を還付する節税が横行していたのも事実です。これを防止するための取り組みは残しておいたのでしょう。雑所得になれば損益通算は使えませんからね。


ここまでの内容をまとめると
・社会通念上、事業といえる内容である
・帳簿書類をつけている
・収入は主な収入の10%以上ある
・赤字だったとしても、黒字にするだけの取り組みをしている
以上の要件を満たせば事業所得であると言えます。

ここまでの内容をふまえて言える事は、”副業をやりましょう”、”帳簿をしっかりつけましょう”です。
副業は自身の力で稼ぐ能力を身につけられ、また見聞も広がります。副業をして確定申告をしている人と、そうでない人の税金に関する知識は雲泥の差です。
また帳簿は必ずつけましょう。そもそも帳簿を付けないというのは事業としてはありえません。また雑所得であっても帳簿は必須と言えます。帳簿が無いと正確な収支は分かりませんし、また副業自体が上手くいっているのかの判断もできかねます。
今回の修正案で言えるのは、真っ当に個人事業をしているのであれば何ら問題ありません。キチンと帳簿を付け、赤字になっても経営努力をしていれば堂々と個人事業だと主張しましょう。
また今回の修正案がでたのは、民意が届いたからです。国税庁が前回のパブリックコメントを出すと同時に意見公募をしました。その結果多くの人が意見を出したことにより、民意が国を動かしたことになります。このような意見公募がある時は、遠慮なく意見を提出するようにしましょう。。

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