労災保険 正しく理解して自分を守ろう ②給付内容について

社会保障制度

前回の記事に続いて労災保険の記事を書きます。前回は労災の認定について書きました。今回は労災における保険給付について書いていこうと思います。

労災における保険給付には療養給付、休業給付、傷病年金、障害給付、介護給付、遺族給付、葬祭料・葬祭給付があります。
※それぞれ療養”補償”給付、休業”補償”給付、傷病”補償”年金、障害”補償”給付、介護”補償”給付、遺族”補償”給付ともいいます。業務災害の場合が”補償”がついて、通勤災害の場合つきません。
1つ1つ解説していきますので、じっくり見て下さい。

・療養(補償)給付
病気や怪我をした時に労災保険指定医療機関で、自己負担なしで治療を受けられたり、薬剤の支給が受けられます。労災保険指定医療機関では窓口負担はありませんが、指定以外の医療機関では窓口で負担金を支払う必要があります。その場合は労働基準監督署に申請することによって、負担した治療費が支給されます。

・休業(補償)給付
療養のために仕事を4日以上休んで賃金が支給されない場合、4日目から休業給付が支給されます(3日間は待期期間)。業務災害の場合は3日目までは事業主が休業補償をします(通勤災害の場合は対象外)。業務災害は事業主にも責任はありますが、通勤災害は事業主に責任が無いからですね。

休業(補償)給付は給付基礎日額の60%となります。
給与基礎日額は「労災事故発生」または「診断を受けた日」の直前の賃金締切日から過去3ヶ月間に支払われた賃金総額を、その期間の総歴日数で割ったものです。賃金総額には通勤手当など各種手当を含めます。ただし臨時で支払われる賃金や、賞与は賃金総額に含めません。
※歴日 カレンダー上の日数です(土日も含める)。夜勤で日をまたぐ勤務の場合、暦日は2日となります。 

なお勤務期間が3ヶ月に満たない場合、直前の締切日から遡って1ヶ月以上ある場合は締切日から遡った期間で算出します。

1ヶ月に満たない場合は事故発生日から遡った期間になります。

また休業特別支給金として、休業4日目からは給付基礎日額の20%が支給されます。つまり休業4日目からは給与基礎日額の60+20=80%が支給されることになるわけです。

休業(補償)給付を受けるには以下の全ての条件を満たす必要があります。
・療養していること
・就労不可能なこと
・賃金の支払いが無いこと


就労不可能とは完全に就労できないケースと、通院に行かなくてはならないなど、一部の時間だけ就労不可能なケースがあります。例えば出勤前に通院しなくてはならない場合などですね。この場合は実際に支払われた賃金を控除した額を元に計算されます。

休業(補償)給付 =(給付基礎日額 - 支払われた賃金)× 60 %
休業特別支給金 =(給付基礎日額 - 支払われた賃金)× 20 %

例えば賃金日額16000円、所定労働時間8時間の人が朝に2時間だけ通院したとしましょう。この場合1時間あたりの賃金は2000円です。つまり2時間通院した場合 16000-2000×2=12000円 の賃金が支払われます。給付基礎日額が10700円だったすると支払われた賃金が給付基礎日額を超えるので、この場合は支給されないことになります。

休業補償の期間は無制限ではありません。次のいずれか早い日までが補償期間となります。
・負傷や疾病が治った日
・療養開始から1年6ヶ月を経過した日
⇒療養開始から1年6ヶ月経過しても回復せず、症状が固定して改善が見込めない場合は傷病年金に切りかわります。
ここまでをまとめると以下のようになりますね。


・傷病(補償)年金
療養開始後1年6ヶ月経過しても回復せず症状が固定して改善が見込めなくその程度が傷病等級に該当する場合に支給されます。傷病等級は1~3級まであり、それぞれ支給期間が異なります。
※傷病等級についてはこちらの表が分かりやすいです ⇒ 傷病等級早見表
いずれも給付基礎日額が支給され、1級は313日、2級は277日、3級は245日支給されます。また傷病(補償)年金とは別に傷病特別支給金、傷病特別年金が支給されます。

傷病特別年金は算定基礎日額が支給されます。負傷又は疾病の日の過去1年間に支払われた特別給与(ボーナス)の総額(算定基礎年額)を365で割ったものが算定基礎日額です。つまりボーナス分の特別給付金となります。まとめると以下のようになります。

※傷病特別年金はボーナスに該当するものなので、特別加入者には支給されません。


・障害(補償)給付
業務災害や通勤災害による病気や怪我が治った後に、一定の障害が残った場合に支給されます。傷病(補償)年金と似ていますが、傷病(補償)年金は治療中に支払われるものになります。一方障害(補償)給付は治療が終了した後に支払われるものです
障害等級は1~14級までありますが、1~7級までの障害等級に該当した場合は障害年金が支給されます。さらに上乗せ分として障害特別年金が支給されます。
※障害等級はこちらで確認して下さい ⇒ 障害等級表
8~14級に該当する場合は障害一時金が支給されます。さらに上乗せ分として障害特別一時金が支給されます。
また全ての障害等級において、障害の度合いに応じた障害特別支給金が支給されます。
表にまとめると以下のようになります。

なお障害(補償)年金には前払一時金制度があります。
これは一時的にまとまった資金が必要になる場合に、障害等級に応じた一定の額を一回に限り前払いを受けることができる制度です。

・介護(補償)給付
労働者が業務災害や通勤災害により介護が必要となった場合に支給されます。支給要件は以下の全てを満たす必要があります。

・傷病年金または障害年金を受ける権利があること
・現に介護を受けていること
・介護老人保健施設、介護医療院、身体障害者支援施設、特別養護老人ホーム等に入所していないこ
・病院または診療所に入院していないこと

また障害の程度が下表に該当する必要があります。

厚生労働省 介護(補償)等給付の請求手続きより抜粋

給付額は以下のようになっています。

・常時介護を要する場合
最高限度額:月額17万1650円 最低保障額:月額7万5290円

・随時介護を要する場合
最高限度額:月額8万5780円 最低保証額:月額3万7600円


・遺族(補償)給付
労働者が死亡した場合、遺族に支給されます。遺族給付には遺族(補償)年金遺族一時金があります。
遺族年金を受給できるのは、主に労働者の収入よって生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹です(この順が受給順位になっています)。
遺族(補償)年金は受給資格のある遺族の人数によってことなり、また遺族(補償)年金の他に遺族特別年金が支給されます。また遺族の人数に関係なく、遺族特別支給金300万円が支給されます。

労働者の死亡時点で遺族年金の受給資格のある遺族が誰もいない場合、一定の遺族に遺族一時金が支給されます。遺族一時金の額は給付基礎日額の1000日分となります。
受給できる順位は以下のようになります。

また遺族(補償)年金を受給していた遺族が死亡するなどし、受給資格をもつ遺族が誰もいなくなった場合も支給されます。この場合は遺族(補償)年金として支給された額が給付基礎日額の1000日分に満たなかった時、その差額分が遺族一時金として支給されます。

遺族一時金が支給される時、一緒に遺族特別一時金が支給されます。遺族特別一時金は算定基礎日額の1000日分となります。(支給要件は遺族一時金と一緒です)


・葬祭料・葬祭給付
労働者が死亡した場合、その葬祭を行った者に対して支給されます。葬祭を行ったものなので、遺族である必要はありません。業務災害で死亡した場合は葬祭料と言い、通勤災害で死亡した場合は葬祭給付といいます。
葬祭料、葬祭給付はいずれも315000円+給付基礎日額の30日分です。
※この額が給付基礎日額の60日分に満たなかった場合は、給付基礎日額60日分の給付金が支払われます。


長々と書きましたが、労災保険の給付内容は理解できたでしょうか?暗記するのはかなり大変なので、必要になったらこの記事を見直してもらえればと思います。こうしてみると日本は社会保障制度が本当によく整備された国です。しかしいずれも自分で請求しなくてはなりません。何も知らないと本来受けられるはずの補償を受けられなくなってしまいます。このような制度は何となくでもいいのでしっておくようにしましょう。そしていざ必要になったらじっくり調べて下さい。
次回の記事で労災保険の記事を締めようと思います。

にほんブログ村 その他生活ブログ マネー(お金)へ
にほんブログ村

記事が良かったと思ったらランキングの応援をお願いします。

自由になりたい薬剤師の学習ノート

サブブログもよろしくお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました