会社に勤めている場合やアルバイトをしている場合、必ず労働者災害補償保険(以下、労災保険)に加入いています。これにより業務上の怪我や病気に対して補償がされることになります。しかし場合によっては労災が下りなかったり、悪質なケースだと事業者が労災保険に加入していなかったりといったケースもあります。今回の記事で労災保険に対する正しい知識をつけて、トラブルから身を守れるようにしましょう。
まず始めに労災保険とは雇用されている人あるいはその遺族を、業務上の業務災害、通勤災害にあった際に生活を保障するための保険です。原則として労働者を1人でも雇用していれば、事業者は強制加入となります。(労働者は正社員、パート、日雇い、外国人労働者を問いません)
※ただし以下の業種は任意加入となります。
①労働者数5人未満の個人経営の農業(特定の危険、有害な作業を主として行わないもの)
②常時労働者を使用しない、年間延べ労働者数が300人未満の個人経営の林業
③労働者数5人未満の個人経営の畜産、養蚕、水産業(5トン未満の漁船によるもの)
これらは暫定任意適用事業所といい、労災保険に加入するかは事業主又は労働者の過半数の意思により決まります。
暫定任意適用事業所以外は全て労災保険に加入しなくてはなりません(強制)。
また労災保険はあくまで労働者の生活を保障するための保険です。そのため雇用主(個人事業主、会社役員、社長など)は保障の対象外です。しかしそれらの人も特別加入制度を用いれば労災保険に加入することが可能となります。
※特別加入制度
業務の内容や災害の発生状況などから、雇用主でも労働者と同等の働きをする場合は保護の対象とすることができます。これが特別加入制度です。特別加入制度は以下の4種があります。
・中小企業主等
・1人親方等
・海外派遣等
・特定作業従事者
ここまでで労災保険の加入については分かりましたでしょうか?
続いて労災の認定について解説していきます。労災には業務災害と通勤災害があります。
・業務災害
業務災害は業務上の負傷と、業務上の疾病のことです。どちらも業務災害として認定されるには業務起因性と業務遂行性の両方を満たすことが必要となります。
業務起因性とは負傷や疾病の原因が業務によるものかどうかです。負傷については業務によるかどうかは分かりやすいかもしれませんが、精神疾患や過労死などは業務によるものかどうかの判断が難しいですね。このような事例の認定は個別具体的な調査をし、労働基準監督署長が行います。
業務遂行性は労働者が労働契約に基づく事業主の支配下にあったかどうかです。業務中はもちろん、休憩時間であっても会社の施設内にいるなど、事業主の支配下にあったとなれば認められます。自己都合で外にランチを取りに行った場合などは認められません。出張や外回りなどは事業主の管理下からは外れますが、業務におけるものなので支配下にあり、この間の負傷等は業務遂行性が認められるでしょう。ただし途中で私用で寄り道をしていた場合などは、支配下にあったと認められないので注意が必要です。
・通勤災害
労働者が通勤中に生じた負傷や疾病、死亡です。以下の移動について合理的な経路、方法により行っているものが対象となります。
①住居と就業の場所との移動
この場合の住居とは、労働者が居住して日常生活の用に供している場所で、就業のための拠点となる場所のことです。自宅の他に別に部屋を借りていて、出張や早出の時に使用していたとすると、そこも住居とみなされます。その他にも繁忙期に会社命令で職場に近いホテルに一定期間滞在していたとなれば、ホテルが住居とみなされます。
②就業場所から他の就業場所への移動
アルバイトを掛け持ちしていて、1ヶ所の業務が終わってから、別のアルバイト先に向かう際の事故なども通勤災害となります。
③住居と就業場所の移動に先行し、または後続する住居間の移動
主に単身赴任をしている場合ですね。単身赴任をしていて、週末だけ家族とともに過ごすため帰省するようなケースです。日曜の夜に家族のいる家から、翌日の業務に備えて単身赴任先に移動する場合などは「先行する移動」であり、金曜の夜に単身赴任先から家族のいる家に移動する場合は「後続する移動」です。移動日が就業日の前日、当日、翌日であれば通勤災害と認められます。長期休暇になる際に勤務終了後から3日後に帰省する場合などは通勤災害とはなりません。
いずれのケースにおいても合理的な経路、方法によるものでなくてはなりません。しかし合理的な経路、方法からの逸脱、中断が日常生活を送るために必要な行為であって最小限の場合は、中断の間を除いて通勤と認められます。具体的な行為は以下のようなものがあります。
・日用品の買い物(趣味や娯楽のための買い物は対象外)
・通院
・介護(単に見舞いに行くなどは対象外)
・選挙
・学校等への通学
以上で労災の概要については分かりましたでしょうか?通勤途中で怪我をしても労災を使えることに気付かず自腹で治療をしている人や、アルバイトに向かう途中の事故が通勤災害になると知らない学生も沢山います。また近年パワハラによるうつ病になってしまう人もいるでしょうが、場合によってはこれも労災と認められます。パワハラを受けている場合などは自身で記録をつけておくなどして、いざという時は労働基準監督署に提出できるなどしておきましょう。個人経営の職場に勤めている人は、職場が暫定任意適用事業所に該当するかの確認も必要ですね。
知は力です。知っていることで身を守れます。労災保険についてはまだまだ覚えることは沢山あるので、続きは次回の記事に書きます。

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