2022年1月1日より健康保険法が改正されました。全部あげると記事が膨大になってしまうので、今回はサラリーマンの人に関係あるであろう、傷病手当金の支給期間の変更点について解説します。
傷病手当金の制度および改正点について確認しましょう。
傷病手当金は病気や怪我の療養のため就労が不可能であり、十分な報酬が得られない場合に、健康保険が被保険者の生活を保障する制度です(国民健康保険にはこの制度はありません)。具体的な支給要件やその期間を見てみましょう。
・病気や怪我の療養で就労できない事
業務災害や通勤災害によるものは対象外です。この場合は労災保険から給付が支払われることになります。仕事に出られないことが要件です。出られるのに休んでいるのは不可です。この判定は医師の意見書などによって行います。
・連続する3日間の待期期間があること
傷病手当金の支給要件には、待期期間として連続して3日間の休みが必要となります。3日間の待期期間を過ぎると、4日目から傷病手当金が支給されます。
※連続した3日間の休みは、土日祝日も関係なく待機期間としてカウントします。またこの期間に有休を取得していても大丈夫です。

・支給される金額はおおよそ給料の3分の2
世間一般では「傷病手当金で給与の3分の2が支給される」と解釈されています。おおむね間違ってはいないのですが、ここでは正確な金額の算出の仕方を知っておきましょう。
正確には支給される日の属する月の前月までの継続する12ヶ月の標準報酬月額の平均値を30で割った金額の、3分の2の金額を1日につき支給します。

標準報酬月額の平均値をベースに算出しているので、単純に給与を3分の2すると若干ずれが生じますが、大きくはズレないでしょう。
※標準報酬月額には通勤費や家族手当、家賃補助などの各種手当も含まれます。ただし一時金(出張手当や祝い金など)は含まれません。
支給開始日の属する月の前月までの加入期間が12ヶ月未満の場合は、下記のいずれか低い額で計算します。
①支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
②傷病手当金の支給開始年度の前年度の9月30日における全被保険者の標準報酬月額の平均額
⇒協会けんぽの場合は、支給開始日が平成31年4月1日以降の場合は30万円。組合けんぽの場合はその組合の全被保険者の標準報酬月額の平均額。
なお休職期間中でも給与が支払われた場合(有休など)は、傷病手当金は支給されません。あくまで就労不能で報酬が得られない被保険者を救済する制度だからですね。ただし支払われた給与が傷病手当金より少ない場合は、その差額が支給されます。(給与は支払われなくても、住宅手当だけもらえたなどのケースが該当します)
・支給期間は1年6ヶ月まで ⇒ ココが改正
2021年までは傷病手当金は支給開始日から起算して、1年6ヶ月まで支給されました。これはどういうことかというと、途中で一時的に勤務した日があった場合や、一旦復職したけどやはり無理で、再度休職した場合でも、その期間は関係なく支給開始日から1年6ヶ月まででした。

今回の改正点はこの支給期間です。支給期間が通算1年6ヶ月まで支給されるようになります。これは実際に支給される期間が1年6ヶ月という意味です。途中で傷病手当金が支給されない期間がある場合は、その期間はカウントされません。実際に支給された期間を合計して1年6ヶ月まで支給されます。

長らく休職するのは癌や精神疾患によるケースが多いです。この場合途中で実際に勤務してみて復職できるか試すのが望ましいです。今までの制度では途中で勤務しても、その期間も含めて1年6ヶ月までしか支給されませんでしたが、今回の改正により「お試し勤務」や「リハビリ勤務」を行ったとしても、その期間は傷病手当金の支給期間に含まれないことになります。その期間は実際に勤務している訳なので、もちろん実際に給与は支払われます。これは従業員にとってはかなり有利に働く改正ですね。その一方事業者側は実際に傷病手当金が支給された日数をしっかりカウントしておかなくてはなりません。事業者側には負担増な改正になります。
・併給調整がある
傷病手当金は併給調整の対象となります。併給調整とは2つ以上の公的な給付を受けられる場合、片方が優先して満額支給され、もう片方が支給されない or 減額されて支給されることです。併給調整の対象となるものには出産手当金、老齢厚生年金(在職老齢年金は除く)、(同一の怪我や疾患による)障害厚生年金、労災保険の休業補償給付があります。
これらが支給される状態で傷病手当金が支給される場合は、いずれのケースでも傷病手当金が併給調整されます。出産手当金や労災の休業給付が満額支給され、その額が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額分の傷病手当金が支給されます。(傷病手当金と同額または多い場合は支給されません)
なおこの差額とは日額で考えます。老齢厚生年金は年額を360で割った金額を、障害厚生年金は障害基礎年金との合計額を360で割った金額を、先述した傷病手当金の日額と比較します。出産手当金の日額の算出方法は傷病手当金と一緒です。
傷病手当金がこの併給調整により支給されなかった場合は傷病手当金の支給期間にカウントされません。一部でも支給される場合は支給期間にカウントされ、1年6ヶ月の支給日に数えられます。
社会保障制度は国民に与えられた平等な権利です。これを正しく理解しておかないと、本来受けられるはずの権利を受けそこなう可能性もあります。それはお金を失うのと同じことです。社会保障制度は改定によって内容が良くなっていくものも多いです。制度を正しく理解してご自身で生活を守りましょう。厚生年金法の改正も行われましたので、それらについても今後の記事で紹介したいと思います。

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