2022年から住宅ローン減税が改正されました。今後住宅を購入する人にとっては是非知っておいて欲しい内容です。今回の記事で改正した住宅ローン減税について説明しますので、今後の住宅購入の際に役立てて下さい。
まず住宅ローン減税についておさらいしましょう。
住宅ローン減税は正確には住宅借入金等特別控除といい、一定の要件を満たすと、年末時点の住宅ローン残高の一定の率が税額控除される制度です。
従来の適応要件について見てみましょう。以下のようになります。
・自己が居住するための住宅であること。
床面積は50㎡以上、床面積の2分の1以上が居住の用に供されること。
※店舗兼住宅でも50㎡以上であればよい。ただし2分の1以上は居住用である必要がある。
・中古住宅においては築20年以内であること(耐火建築物の時は築25年以内でよい)。または一定の耐震基準を満たすこと。
※一定の耐震基準を満たした場合は築年数の要件は関係なくなる。
居住の日までに耐震基準適合証明書が必要になる。
・中古住宅においては既存住宅瑕疵保険に入っていること
中古住宅の検査と瑕疵の保証がセットになった保険です。
中古住宅は個人間売買のケースが多いので、瑕疵があった際に売り主が責任を負うのが困難です。そのため買い主が検査事業者に補修請求ができるようにした保険です。
・取得した家屋に6ヶ月以内に居住し、その年の12月31日まで住み続ける事。
・控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること。
これらの要件を満たした場合、年末のローン残高の1%が税額控除されます。税額控除と言うところが重要で、所得控除ではありません。実際に収める所得税の金額からダイレクトに控除されます。例えば年末のローン残高が2000万円なら、20万円の所得税が直接控除されます。また控除しきれない額は翌年の住民税から控除されます。
控除可能な期間は10年間です。つまり10年間は毎年の年末のローン残高の1%が控除されることになります。なお一般的な住宅と認定住宅ではローン残高限度額が異なります。まとめると以下のようになります。

気を付けなくてはならないのが、中古住宅の売買のケースです。中古住宅は不動産会社が個人から買い取って、新たな買い手は不動産会社から購入するケースと、個人の売り手から買い手が直接購入するケースがあります。後者の場合は不動産会社は仲介を行っているだけですね。個人間売買では消費税がかかりません。消費税が課税されるのは以下の要件を全て満たした場合だけだからです。
①日本国内における取引である
②事業者が事業として行うものである
③対価を得て行うものである
④資産の譲渡・貸付または役務の提供によるものである
個人間売買の場合、②に該当しないため消費税がかかりません。中古住宅の売買は多くのケースが個人間売買です。その場合、例えば年末のローン残高が3000万円あっても、2000万円の部分までしか控除されず、控除額は20万円になります。
長くなりましたが、従来の住宅ローン減税については分かりましたでしょうか?
住宅ローン減税は本来住宅を購入する人のローン負担を軽減させるための制度でした。しかし昨今の低金利により、住宅ローンは1%を切ることが普通になっています。変動金利なら0.4%~くらいですね。
そのためローンを借りて購入した方が安上がりになってしまう逆ザヤが問題視されていました。そのため今回の改正になったわけですね。
それでは次から改正された住宅ローン減税について説明します。変更点は以下のようになります。
・制度自体は4年間延長され、2025年末までとなる
つまり2025年末までに住宅を取得し、入居まで完了しないといけません。
・控除率が1%から0.7%に下げられる
・床面積の要件が50㎡以上から40㎡以上に緩和
・控除期間が10年から13年に延長される(新築、買取再販の場合)
※買取再販とは不動産会社が中古住宅を買い取って、リフォームして売りに出したものです
中古住宅は10年のままで据え置きです。
ただし2024年、2025年に入居の場合は一般的な新築住宅も10年になります。後述する認定住宅、ZEH、省エネ住宅は2024年、2025年入居でも13年です。
・控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下から2000万円以下に引き下げ
ただし床面積が40㎡以上50㎡未満のものについては1000万円以下
・中古住宅は築年時期が昭和57年(1982年)以降であればよくなる
築20年以内(耐火建築物なら築25年以内)といった要件がなくなり、1982年以降に建てられていれば大丈夫です。
新耐震基準は1981年に改定され、震度6~7でも倒壊しないとされた基準です。1982年以降に建てられた建物なら新耐震基準を満たすとみなされます。必要書類が登記簿だけで済むので楽になりましたね。
・環境性能に優れた住宅を対象とした優遇措置が取られる
従来は優遇措置が取られていたのは認定住宅だけでしたが、これにZEHと省エネ住宅が加わります。
ZEHとはネットゼロエネルギーハウスの略です。
①高い「断熱」性
②HEMSや高効率機器による「省エネ」
※HEMSとは住宅内の消費エネルギーと太陽光発電等で創るエネルギーを確認できるシステム
③太陽光発電などを備える「創エネ」
この「断熱」「省エネ」「創エネ」により、住宅の一次エネルギーの年間消費量が正味でおおむねゼロになる住宅です。(消費エネルギー≦創造エネルギー)
省エネ住宅とは「外皮性能」「一次エネルギー消費量」の2つの基準を満たした住宅です。
外皮性能とは壁や窓、床、天井で室温を一定に保つ性能です。(詳しくは長くなるので割愛します)
一次エネルギー消費量とは電気、都市ガスなどは単位がバラバラなので、これを石油、石炭、天然ガスなどの一次エネルギーに換算したものです。これが基準値以下となる必要があります。
なお地域によって寒暖の差が激しいので、全国を8つに区切って、それぞれの異なる基準となっています。
このように環境性能に優れた住宅を「認定住宅」「ZEH」「省エネ住宅」に区分して、それぞれでローン残高限度額が異なっています。

一般的な住宅は2023年までに建築が終わっていないと住宅ローン減税を受けられないのが痛いですね。一般的な中古住宅よりも優遇されていないのが悔やまれます。国は環境に優しい住宅を取得してほしい意図が見て取れます。(このように必ず制度趣旨を理解しましょう)
なんとも複雑になった住宅ローン減税ですが、まとめると以下のようになります。

所得がある程度高い人は控除が受けられなくなり(合計所得金額2000万円以上で適応不可)、控除率が0.7%に下がったのことから、基本的には税金の締め上げですね。しかしZEHや省エネ住宅が新たな基準をして追加されたことから、環境に優しい住宅を購入する人にはそれなりに恩恵があります。しかしトータルで見れば税金が締め上げられている状況に変わりありません。
2026年以降のローン残高限度額に関しては不明ですし、この記事を書くにあたって、税務署に何点か質問しましたが、ほとんどが「分からない」と答えられました。まだまだ制度が確定したわけではないので、今後も注意が必要です。
最後に、既に住宅ローン減税を受けている人は既存の制度がそのまま適応されます。既に住宅ローン減税を受けていて、2025年までに買い替えの予定がない人は、特に考えなくても大丈夫ですね。
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