住宅の土地 所有権か借地権か確認して

不動産

少し前の話ですが両親が自宅を売却して、新たにマンションを購入して、そちらに引っ越しました。母が病気になったので、今までの自宅では今後の生活に不安があり、マンションに引っ越した経緯です。さて自宅を売却するにあたって1つ問題がありました。自宅は両親の持ち物ですが、その土地の部分が地主の物でした。つまり借地権付き建物だったわけですね。今後自宅の購入を考えている人は、それが完全所有権なのか、あるいは借地権付き建物なのかをよく確認したおいた方がいいでしょう。今回は借地権について解説します。

借地権とは「建物の所有を目的に土地を借りる権利」のことです。
土地や建物などの不動産を所有する権利に所有権がありますが、土地の所有者がその土地を貸して、借主が建物を建てている場合は、土地の権利は貸主と借主の両方にあるわけです。
借主からみればその土地は借地であり、その権利は借地権といいます。貸主から見た場合、その土地は底地といい、その権利は底地権というわけですね。

この借地権ですが地上権土地賃借権の2種類があります。
地上権は他人の所有する土地で工作物または竹林を所有するために、土地を利用する権利であり、これは物件です。地上権を登記する場合は地主は協力義務があり、また地上権は地主の承諾なく自由に譲渡、転借できます。
土地賃借権は賃料を支払い、土地を利用する権利であり、これは債権です。土地賃借権を登記する場合に、地主に協力義務はありません。土地賃借権を譲渡、転借する場合は地主の承諾が必要になります。
(地主が承諾しない場合、裁判所が代わりに許可を与えることが出来ます)

地上権は物を直接支配する権利であり、土地賃借権に比べてより強い権利を持っていると言えます。地上権は地主に対して不利な権利なので、実際はほとんどが土地賃借権が使われています。
※橋やトンネルなど公共事業の場合は地上権が設定されます。

ここまでで借地権については理解できたでしょうか?さて住宅などの不動産を購入する場合、パンフレットをみると土地の権利形態の部分の記載があります。これをみれば土地が借地権なのか、土地も建物も完全な所有権なのかが分かりますね。





さて借地に関する法律として借地借家法がありますが、これは1992年8月1日に施工されています。これ以前の契約には旧借地法が適応されます。つまり現状の借地契約においては旧借地法によるものと借地借家法によるものが混在している状態です。
※たとえ借地契約を更新しても、契約締結時が1992年8月1日以前なら旧借地法が適応されます。
借地借家法と旧借地法の違いを確認しておきましょう。
※定期借地権については今回は割愛し、普通借地権についてのみ紹介します


堅固建物とは、石造、レンガ造、コンクリート造、鉄筋コンクリート造などの頑丈な建物を指し、非堅固建物は木造の建物が該当します。
「期間の定めのない」とは当事者はいつでも解約の申し入れが出来ることです。

借地権付き建物は土地も完全所有権の場合と比較してどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?これを見てみましょう。

・メリット①安く購入できる
通常住宅を購入する場合は、その価格は建物と土地の合計の値段になります。しかし借地権の場合、土地を購入するのではなく、その土地の借地権を購入することになります。借地権価格は土地の値段の6~8割程度になっていることが多いです。そのため住宅購入コストを抑えられます。

・メリット②固定資産税が安い
不動産を所有する人にとって一番痛い出費が固定資産税かもしれません。固定資産税は土地と建物のそれぞれに課税されます。しかし借地の場合、あくまで所有権は底地権者(地主)にあるので、土地の部分の固定資産税がかかりません。負担するのは建物の固定資産税だけですみます。

・メリット③建物があれば更新ができる
借地権は借地上に建物があることを条件に更新ができます。借地借家法は基本的に借地人を保護するためのものです。つまり建物さえあれば未来永劫土地を利用できることになります。
地主からの更新拒絶には正当な理由が必要です(土地を必要とする旨、地代の不払いがあるなど)。またその際にも地主から借地人への相応の立ち退き料が必要となります。


デメリットには以下のようなものがあります。

・デメリット①地代がかる
借地権は土地を借りて利用する権利なので、利用するには地代が必要となります。地代の相場は年額で更地価格の2~3%となっています。

・デメリット②銀行の融資を受けにくい
住宅を購入する場合はほとんどの人が銀行からローンを組んで購入するでしょう。ローンを組む場合は担保を用意し、それに抵当権を設定します。借地権付き建物の場合、土地の部分を担保にすることはほとんどできません。また建物も売却しにくいので、担保価値は低いと言わざるを得ません。そのため融資が受け辛いのが現状です。

・デメリット③増改装をする場合は地主の承諾が必要になる
建物は自分のものとはいえ、増改装をする場合は地主の許可が必要になります。建物の面積や土地の形状が変わるような場合、当初に交わした借地契約から逸脱してしまうので、このような場合は地主の承諾が必要となります。
※壊れた箇所の補修や壁紙の張替え、キッチンや風呂場のリフォームなどでは不要です
借地契約の際の契約書に増改築禁止特約が設定されていないか確認しておきましょう。地主の承諾を得る際に増改築承諾料が必要となります。土地の更地価格の2~4%程度が増場です。

建物の建て替えの場合も同様に地主の承諾が必要です。建て替え承諾料が必要になり、土地の更地価格の3~4%程度が相場です。
特に建物の用途変更については注意が必要です(住宅から店舗・事務所など)。前述したように固定資産税は地主が負担しています。そして住宅が建てられている土地は固定資産税が軽減されています。(200㎡までは6分の1、200㎡を超える部分は3分の1)
しかし建物が住宅でなくなった場合はこの軽減が適応されなくなり、地主の固定資産税が増加します。その場合は当然地代の値上げが考えられます。
また旧借地法で契約した借地契約の場合、非堅固建物だったものを堅固建物に替えた場合も地代の値上げが考えられるでしょう。旧借地法では堅固建物は非堅固建物より契約の存続期間が長く、地主にとっては不利な条件になりますしね。

・デメリット④売却をする場合も地主の承諾が必要
増改築の場合と同様に、売却にも地主の承諾が必要となります。借地権が地上権の場合は地主の承諾は不要ですが、ほとんどが土地賃借権なので、地主の承諾が必要となります。
借地権付き建物を売却する場合は、次のような方法があります。
※等価交換方式により土地と建物の所有権の一部を取得して売却する方法もありますが、事業用建物等で行われるのが一般的であり、個人住宅ではあまりみられないので、ここでは割愛します。

1⃣借地権付き建物として売却
建物と借地権をセットで第3者に売却する方法です。この場合は譲渡承諾料名義書換料が必要になります。

2⃣借地権を地主に買い取ってもらう
借地権を地主に買い取ってもらえば、その土地の所有権は完全に地主のものになります。
その場合建物はどうなるでしょうか?借地借家法第13条に建物買取請求権があり、借地契約の契約満了時期になり契約を更新しない場合は、地主に対して借地権も建物も時価で買い取るように請求ができます。
しかし契約の途中で解約する場合は特約が無い限り、借地人の負担で建物を取り壊し、更地で返還することになります。

3⃣底地を買い取って売却
底地を買い取れば土地は完全な所有権になります。そうすれば土地も建物も売却は自由になります。ただしこれも地主が承諾する必要があり、ハードルが高いと言わざるをえません。

底地の買い取り相場は、借地人が買い取る場合は更地価格の50%程度です。


以上のように借地のメリット、デメリットがあります。一般的には借地権付き建物は一長一短であり、人によっては有効な買い物ともいわれています。しかし個人的には借地権付き建物はおススメしません。
最大のデメリットは売却がし辛いことでしょう。両親の自宅は借地権付き建物として売却しました。そのため譲渡承諾料や名義書換料といったコストが発生しています。また借地権付き建物は、土地が所有権の物件に比べて売れにくい傾向にあります。これは地代の負担が必要になり、一般的に地代は固定資産税より高いからです。両親の自宅も買い手がなかなかつかなかったので、最終的に不動産会社に買い取ってもらいました。(現在賃貸物件として利用されています)
過去の記事でも書いたように不動産投資は最後に売り抜けて初めて成功です。これは住宅の取得についても同じことが言えます。永遠に同じ住宅に住むことはあり得ません。必ず引っ越しや建て替えなどが必要となってくるでしょう。その際に借地権付き建物は様々なハードルをクリアしなくてはなりません。住宅を取得する場合は、いざとなったら売却しやすい、もっと言うなら価値の落ちにくい or より高く売却できるリセールバリューの高い物件にするのが、人生の選択肢を広げてくれます。

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