事業継承の円滑化 ②種類株式の活用

その他

前回の記事の続きです。前回の記事では種類株式について説明しました。今回の記事では具体的な活用方法を紹介します。

まず初めに種類株式を発行していないといけません。もともと種類株式を発行しておらず、普通株式しか発行していない場合は新たに種類株式を発行する必要があります。この場合、新規に発行するケースと、既存の株式をっ種類株式に転換するケースの2つがあります。それぞれ見てみましょう。

・新たに発行するケース
この場合は会社の定款を変更して、種類株式を発行できる旨を定める必要があります。発行する種類株式の内容、発行可能株式総数を定めます。定款の変更には株主総会の特別決議が必要です。
ここで特別決議について確認しておきましょう。特別決議は普通決議に比べて、より重要度の高い議案の決議に用いられます。そのため決議に必要な議決権がより厳しい基準となっています。

具体的には定款の変更、資本金の減少、監査役の解任、事業の譲渡・解散・清算、会社の合併などです。
※特殊決議は定款を変更し、全ての株式を譲渡制限株式とするケースなどです
そのため事業継承の前に、先代経営者単独または継承の方針に同意した人で、少なくとも3分の2以上の株式を保有しておく必要があるでしょう。
なお既に他の種類株式を発行している場合には、株主総会の他に種類株主総会の決議も必要となるため注意が必要です。

・既に発行済の株式を種類株式に転換するケース
新たに発行するケースと同様に、定款を変更して種類株式を発行できる旨を定めます。
その後既存の株式を種類株式に転換することについて、全株主の同意が必要となります。
※種類株式へ転換を希望する株主だけでなく、普通株式に留まる株主の全員です。


次に具体的な活用方法を見てみましょう。
まずは後継者が経営者として成熟していないケースです。
概ね会社を任せて大丈夫かもしれなくても、先代経営者に不安が残る場合もあります(後継者が先代経営者の子供だったりすると特にそうかもしれません)。この場合、拒否権付株式を1株だけ発行して、これを先代経営者が保持しておきます。
これにより後継者が誤った方向に会社の舵をとったり、暴走しそうな時は、株主総会の決議を種類株式総会で拒否できます。種類株式を拒否権付株式1株だけにしておけば、先代経営者の意志だけで拒否権を行使できます。
あるいは役員選任解任権付株式を同様に保持しておけば、役員を先代経営者が選ぶことが出来ます。
どちらにせよ後継者が成熟したら、この種類株式は普通株式に転換すべきでしょうね。

最も多いのは経営権の集中でしょう。
家族経営の会社の場合、相続財産のほとんどが自社株なんてことは珍しくありません。先代経営者の子供が3人いて、1人を後継者と決めているとしましょう。後継者に全ての株式を相続させると、残り2人の遺留分を侵害してしまいます。しかし平等に3人に分けたのでは後継者の経営権を脅かしかねません。

この場合は後継者に普通株式を相続させ、残り2人には議決権制限株式を相続させます。これにより後継者以外の2人の遺留分を守りつつ、後継者に経営権を集中させられます。



また後継者が決まっていないケースでは取得条項付株式を活用できます。
この場合、あらかじめ後継者の候補者全員に取得条項株式を渡しておきます。

会社が株式を取得する一定の事由を後継者が決まった場合とします。後継者の株式は普通株式を交換して取得し、候補者であったその他の者の株式は現金で買い取ったり、社債に転換することで、経営権は自動的に後継者に移ります。



以上が一般的な活用の仕方です。種類株式は9つの異なる権利があるので、上手く組み合わせればもっと上手な活用方法もあるはずです。
実際に種類株式を発行したり、普通株式を転換するには複雑な手続きが必要となるため、税理士や司法書士、弁護士などの専門家に頼る必要があるでしょう。しかし種類株式の存在を知っているかどうかで、たてられる事業継承計画の幅が違ってきます。このブログを活用してある程度の知識をつけて、事業継承計画をたててもらい、最後の細かい手続きに関しては専門家を頼ってもらえればと思います。

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